拓本をスクリーンに移しながら先生は言われた。「今まで見てきた整った楷書と違い、肉厚でどっしりと重厚な印象を受けます。
顔真卿は、書家として有名だったばかりでなく、安禄山の変の鎮圧に活躍するなど、剛直・勇敢な武人としても名を成しています。彼の性格を思わせるような書風です。」
特徴として、次のことが挙げられる。(その用筆は、顔法といわれる。)
基本は直筆・蔵鋒。線は太い。
向かい合う縦画は向勢
始筆・終筆に、「蚕頭燕尾」がみられる。
字形は向勢。ほとんどの字は正方形に近い。
<蚕頭燕尾の書き方> 下図参照
始筆・・・逆筆で入筆し、蚕の頭のように筆先を丸めて蔵法で力を抜かずむしろ筆圧を加えながら運筆する。最後に同じく筆を丸めて筆を収める。
払いやはね・・・終筆で穂先をまとめて、一定の方向へ勢いよく払う。その払いは、あたかも、燕の尾羽根のようにみえる。
「彼の書風は、現在の印刷活字に採用され、今でも実用レベルで使われています。」